悠久の風に吹かれて

Blowin' in the Eternal Wind

Oriental Architecture /1

Oriental Architecture /1 の紹介

 

30年ほど前に買った Oriental Architecture という洋書を紹介します。ある意味、私がアジアの遺跡や古寺が好きになったのは、この本に出会ったおかげであるとも言えます。その影響は今考えてもとても大きくて、私の心のバイブルと言える本なんです。本書は1989年に出版されていて、著者は Mario Bussagli という人です。

 

 

この本と出会ったのは30年ほど前で、ある建築家の展覧会場でした。展覧会見学後にミュージアム・ショップでふと見かけた洋書を手に取って見ました。パッキングされていて中身は見れなかったのですが、表紙のなんだか見慣れない寺院建築の写真に魅入られてしまいました。西洋の教会ともアンコール遺跡などの寺院とも少し異なった様式の石造りの寺院、一体どこの国の遺跡なんだろう?そういったことをあれこれ想像するうちに内容に興味がかき立てられて、購入することにしました。当時にしては結構高額だった記憶があります。

 

本書の内容はインド、ミャンマー、タイ、インドネシアなど東南アジアの寺院建築が豊富な写真で紹介されてるものです。内容の大部分はモノクロですが、ところどころカラーページの部分があって、その部分の写真はたいへん美しく見る度に目を奪われました。そして表紙の写真はインドのマハ―バリブラムというところにある、Five Rathas [5つのラタ] という石彫寺院であることがわかりました。

 

ところでOriental Architecture / 1となっていますが、当然2もあって、こちらは所有していませんが、内容は中国、韓国、日本などの建築が紹介されているようです。さらにAmazonで調べてみると、1975年に出版された、同じ著者の Oriental Architecture というハードカバーの本もあって、どうやらもともと1冊の本を後年ソフトカバーの2分冊に分けてして出版したようです。

 

Oriental Architecture / 1は、半分以上がインドの建築を取り扱っていて、なかでも上にあげたマハ―バリブラムの5つのラタや海岸寺院、コナーラクのスーリヤ寺院などが印象に残りました。その他、ミャンマーのパガンの寺院群やカンボジアのアンコール遺跡群、インドネシアのボロブドゥール遺跡やプランバナン遺跡など、東南アジアの遺跡がひと通り紹介されており、行ったこともない国の遺跡を夢見て、若い時から何度この本を繰り返し読んだことでしょう。しかし、そういった遺跡を訪れる機会はないままに仕事や毎日の雑事に追われて月日は過ぎていきました。この本を読んで呼び起こされた中世の文化への感動や、いつの日か現地に行ってみて自分の目で見て確かめてみたいと思う憧憬は、現実の生活の日常の繰り返しの中、記憶のひだの中へと沈んでいきました。

 

そうした中転機が訪れたのは、10年ほど前に行った、タイのバンコク旅行の時です。旅行を計画している時に、ふとこの本のことを思い出したのです。調べて見るとタイのスワンナプーム空港からカンボジアシェリムアップまで飛行機を使うと以外と近いことがわかりました。そこで急遽予定を変更して、タイ旅行の途中にアンコール遺跡訪問をすることにしました。僅か2泊3日の滞在だったのですが、その素晴らしい遺跡群に大変感銘を受けました。それ以来、遺跡訪問をテーマにした旅をするようになったのです。

 

アンコール遺跡の訪問後、図書館に通って自分なりに遺跡や寺院などを調べてみるようになりました。そしてその過程でいくつかの素晴らしい書籍と出会いました。それらの書籍については、また別途紹介したいと思いますが、私がアジアの遺跡に興味を持つきっかけとなったこの本は、30年以上たった今でも全く輝きを失っていません。