悠久の風に吹かれて

Blowin' in the Eternal Wind

ムクテーシュワラ寺院

Mukteshvara Temple

 

ムクテーシュワラ寺院はブバネーシュワルにある、10世紀後半に建造されたヒンドゥー教の寺院です。シヴァ神をを本尊に祀っています。敷地内には複数の寺院の建物が建っており、ムクテーシュワラ寺院自体は大変小規模のものとなっています

 

 

 

寺院の配置は、ジャガモハン(拝堂)とデウル(聖堂)という簡素な構造です。デウルの高さは10.5mで、その形状も遠目に見ると古風な感じで、平面計画も方形を基本としたシンプルなものです。カジュラホの進化・発展したシカラと比較すると、形状の違いは歴然としています。ジャガモハンは、拝堂の上にピラミッド状の屋根が架かったオリッサ地方特有のピダー・デウルの形状で、これはブバネーシュワルの他の寺院にもよく見られます。

 

本殿のまわりに高さ1mほどの低い塀が張り巡らされています。本殿と塀の間は、狭いところでは約1mほどしかなく、反対側から人がくるとかろうじてすれ違うことができる程度です。

 

 

寺院の入口の前にトーラナと呼ばれるアーチ型の門があるのが特長です。このトーラナにはアーチにもたれかかる女神の彫刻が印象的です。アーチの両端部分には、デフォルメされた象の彫像があり、柱の基部の3面にはデウルを模したレリーフもあります。

 

この寺院で私が一番素晴らしいと思うのは、デウルに施された微細な彫刻です。デウルの各面の中央部分には、ライオンやグリフィン、象、兵士などの具体的なものの彫刻があるのですが、それ以外の大部分は抽象的なパターンが彫刻されています。この模様は拡大して見るとアールヌーヴォーにも似た植物をモチーフにしたもののようです。しかし、少し引いて見てみるともっと機械的なものにも見え、動物の骨を並べたもののようにも見えます。

 

 

私はこの彫刻を見てスイスの画家、H.R.ギーガーのN.Y.CITYという絵の連作を想起しました。N.Y.CITYはギーガーがおそらくコンピュータのプリント基板のパターンにインスパイアされて描いたものだと思われますが、その20世紀の作品がそれより1000年も前に建てられた寺院に似ているって、偶然なんでしょうけどちょっと不思議ですね。

Siddheswara 寺院

ムクテーシュワラ寺院の敷地は結構広くて、その敷地内に祠堂だけの小寺院がいくつもあります。その中で、Siddheswara 寺院はジャガモハンとデウルを持つ立派な寺院で、規模もムクテーシュワラ寺院よりも大きいくらいです。

 

この寺院が建造されたのは、ムクテーシュワラ寺院よりも後とされており、その細部の彫刻はムクテーシュワラ寺院のような細かさはないのですが、とうもろこしを束ねたようなデウルやピラミッド型のジャガモハンなど、全体の構成はブバネーシュワルの他の寺院と似た点が多く見られます。

デウルの上部にある、四方に突き出た台の上に鎮座するライオンの像が目を引き付けます。デウルの彫刻は、有機的なものではなく、幾何学模様をベースにしカクカクした無機的なものになっています。もはや彫刻に手間をかけられなくなったのでしょうか?

ムクテーシュワラ寺院の夜景

私が初めてこの寺院を訪ねた時あまりも大きな感銘を受けたため、次の日ももう一度訪れることにしました。前日に投光器があるのを確認していたため、今回はライトアップされた夜景を撮るためです。しかし、旅行記の方に書いたように、デジカメは使えずスマホのみの撮影となってしまったため、画像が今ひとつでとても残念でした。