Parshvanatha temple
パールシュヴァナータ寺院はカジュラホの東群にあるジャイナ教寺院です。カジュラホというと、ホテルなどのある市街地に近くて遺跡公園の中ににある、西群寺院が有名ですが、パールシュヴァナータ寺院はそこから2Kmほど西に離れた場所にあります。徒歩で30分ほどですから、なんとか歩いていける距離だと思います。
寺院の近くまで行くと、塀に囲まれた広い敷地の中に、シャーンティナータ寺院、パールシュヴァナータ寺院、アーディナータ寺院の3つの寺院と多数の祠堂が建っています。このうちシャーンティナータ寺院は、現在でも生きているジャイナ教寺院のようで、参拝者も多かったです。建物も新しく見えたので、私はこの寺院はほとんど見ずに済ませましたが、今にして思えばもっとちゃんと見ておけばよかったと、ちょっと後悔しています。
パールシュヴァナータ寺院は敷地の奥の方に隣あって建っていました。ジャイナ教寺院といいますが、カジュラホの他のヒンドゥー教寺院との違いはあまりわかりませんでした。この寺院は10世紀半ばに建築されたもので、西群の寺院よりも若干早い時期に建てられているそうです。そのせいか、プランはよりシンプルで長方形に近いものになっています。それに加えて西群寺院に見られるようなバルコニーのような開口部もなく、平面図を見る限りでは、見た目が面白くなくなってしまいがちです。
しかし、実際に寺院の前に立つと3段にわたって構成された彫像がまるで一幅の絵画のように眼前にすごい迫力でせまってきます。シンプルな構造がかえって壁体のボリュームを感じさせるように思います。まわりに色々な建物が建っており、あまり離れてみることができないのも、そう感じさせる一因かも知れません。
すべてのジャイナ教の寺院は24人のティールタンカラ (TIRTHANKARA/祖師) のいずれかが祀られているそうですが、このパールシュヴァナータ寺院は名前のとおりパールシュヴァを本尊としています。パールシュヴァは蛇を象徴しているので、像の背後には9本首のナーガが見てとれます。
平面図を見てもらうとわかりやすいのですが、入り口のポーチの反対側に祠堂から突出した部分があり、ここにもパールシュヴァ像が祀られています。このようにシカラの背面に構造物が付属するのは、珍しいのではないかと思います。
この寺院はカジュラホの寺院群のなかでは比較的早く建築されたようですが、シカラ上部の群塔の構造や壁に細かく施された彫刻など、後のつくられた西群寺院にも遜色ない素晴らしい遺跡でした。