悠久の風に吹かれて

Blowin' in the Eternal Wind

ヴィシュワナート寺院

Vishvanatha Temple

 

ヴィシュワナート寺院はカジュラホ西郡の寺院のひとつで、1002年に創建されたとされています。遺跡公園のなかでも、カンダーリア・マハーデーヴァ寺院、ラクシュマナ寺院と並んで規模の大きい3つの寺院のうちの一つです。

この3つの寺院の大きさ、形状は非常によく似ており、本堂の1枚の写真だけでどれがどの寺院か言い当てることは困難なほどです。一枚の設計図をもとにこれらの寺院が建てられたのではないか?とも思えます。この類似関係は同じ西郡のチトラグプタ寺院とデーヴィー・ジャグダンベ寺院にもあります。

一見同じように見える3つの寺院ですが、シカラやマンダバ上部の形状を子細に比較していくと、やはりそれなりの違いがあります。

シカラの形状に関しては、寺院の建造順、すなわちラクシュマナ寺院、ヴィシュワナート寺院、カンダーリア・マハーデーヴァ寺院の順で、徐々に直線的な形状から曲線的で有機的な形状に変化しています。またメインのシカラのまわりに配置された小シカラ、孫シカラの配置も徐々に複雑さを増してゆき、カンダーリア・マハーデーヴァ寺院ではもはやフラクタル的な有機性を獲得しているように思います。

マンダバ上部の形状についても、ラクシュマナ寺院、ヴィシュワナート寺院はオリッサ地方の寺院に顕著な特徴である水平に方形を積み重ねた形状なのですが、ここでもヴィシュワナート寺院は各段の方形の角を切り欠いて、それぞれの形状をピラミッド型から紡錘形に近づけるなどより複雑さを増したものになっています。

カンダーリア・マハーデーヴァ寺院ではこの切り欠きがさらに細分化されて、水平方向のラインの強調もなくなり、もはや遠目には円柱形の小塔が並んでいるようにしか見えません。こうやって比較すると、改めてカンダーリア・マハーデーヴァ寺院の素晴らしさが浮き彫りにされますね。

一方、ヴィシュワナート寺院、ラクシュマナ寺院がカンダーリア・マハーデーヴァ寺院と違うところは、5堂形式(パンチャー・ラタ)になっているところです。ヴィシュワナート寺院は高さ3mの基壇上に本堂が建っており、その本堂の周りに本来なら4基の小堂が建っていたはずなのですが、現在では2基しか残されていません。そしてその残された2基の小堂も、壊れていた部品を集めて雑に復元されたような部分が見受けられ、ちょっと残念な感じがします。

基壇上の本堂の反対側には独立したナンディ堂があり、これもヴィシュワナート寺院の特徴になっています。ナンディ堂はマンダバと同様の階段状の屋根を持ち、その屋根を多数の柱で浮かせたような構造になっています。ナンディ堂の内部は休憩所のようにバベンチがあり、暑い中の観光で疲れた人たちの憩いの場所になっていました。